この記事はこんな方向け!
- 日本に帰ってから、子どもが授業についていけるか心配…
- うちの子英語の本ばかり読んでるけど大丈夫?
- 海外在住なんだけど、子どもの読書って何語の本を読めばいいの?
あなたのお子さんは本を読むことが好きですか?
子どもにとって読書はとても重要。
読書は学力が向上するばかりではなく、将来社会で必要となる6つの力を身につけることができるからです。
読書で身につく6つの力
- 読解力
- 記憶力
- 思考力
- 文章力
- プレゼン力
- 他人を理解する力
\6つの力について詳しく書いています/
では海外在住の子どもは、この6つの力を身につけるには、何語の本を読めばいいのでしょうか。
先に結論を言ってしまうと、実は何語でもOK。もちろんある程度の言語能力があることが前提ですが、6つの力を身につけるには何語でもいいんです。
ですが!
教育系国立大学院卒・元大手進学塾講師・現アメリカ駐在妻11年目のワタクシふみのおすすめは、断然日本語での読書!
なぜなら6つの力を身につけることと同じくらい重要なことを、日本語の読書で身につけられるからです。
その重要なこととは、日本語語彙力や漢字力を得ること。
6つの力を身につけるには何語の本でも良いですが、日本語語彙力や漢字力は日本語での読書でしか身につきません
日本語での読書で語彙力・漢字力を鍛えておけば、日本に帰国した後、スムーズに日本の授業や学校生活に溶け込むことができますよ。
英語の本?日本語の本?
英語の本でも6つの力は身につくが、言語能力が必要
私はアメリカ在住なので、日本語以外の言語を英語としますが、英語に限らずどの言語で読書しても6つの力は身につきます。
もちろん母国語以外での読書となるので、ある程度の言語能力は必要。なぜなら言語能力がない状態で本を読んでも、ぼんやりと字面を目でなぞるだけで、文章の深いところまで理解できないからです。
考え事をしながら本を読んでいると、まったく内容が入ってこないのと同じです
これでは6つの力は身につきません。
英語の本だけでは不十分
6つの力を身につけるだけなら、英語での読書でまったく問題ありません。
ただ将来的に日本に帰国する場合、語彙力・漢字力の観点から、英語の本だけでは不十分。英語の本を読むのと同時に日本語の本を読むことも必要です。
日本語語彙は今まで英語で獲得してきた語彙に、日本語語彙をパズルのように当てはめれば獲得できます。
語彙の意味は英語ですでに理解しているので、単純に当てはめていけばいいのです。
パズルをするにはパズルのピースが必要です。
ところがパズルのピースである日本語語彙は、自然に身につくものではありません(後述)。意識的に獲得していかなければならないのです。
しかも漢字は一から覚えなくてはいけません。
こう考えると、最初から日本語で読書した方が効率的のような…
英語の本ばかり読む子への対応
うちの子、英語の本ばかり読んでて日本語の本はさっぱり読まない…
英語での読書に慣れてしまうと、日本語での読書が苦痛になります。もしすでに日本語での読書が苦痛になり始めていたら、読み聞かせをするのも手ですよ。
小5の息子は日本語の本をあまり読まないので、寝る前に15分読み聞かせをしています
読み聞かせを嫌がる年齢に達していたら、以下の方法を試してみてください。
- 親がリビングなどで本を読む姿を見せる(読書が当たり前の雰囲気作り)
- 本棚に本を並べる(いつでも目に入るようにする)
- 映画やドラマになった話題作を購入する(興味のきっかけ作り)
- マンガでもいいので購入して本棚へ(マンガを読書の入り口にするのは大いにアリ!)
◆どうやって日本語の本を手に入れればいいの?というあなたに >>【海外在住】子どもの日本語の本を海外で手に入れる7つの方法
語彙力・漢字力の重要性
語彙力・漢字力は自然に身につかない
漢字力や語彙力が足りなくても、帰国すればすぐ覚えるでしょ!大丈夫大丈夫!
残念ながら漢字や語彙は自然に覚えることはできません。
ある程度の努力が必要となってきます。「帰国したらすぐ覚えられる」ものではありません。今からコツコツ覚えていく必要があります
ではどうやってコツコツ覚えていくのか?ここで読書が登場するのです。
人間の記憶システムから考えると読書が最適
日常的に日本語を使わない海外在住の子どもたちが、日本語語彙力や漢字力を手に入れるためには、積極的に日本語に触れることが必要です。
最近はyoutubeなどで日本語に触れられる機会もありますが、人間の記憶システムから考えると、読書が一番おすすめ。
人間の記憶システムとは、繰り返し見る・書く・聞く・口に出す、これによって記憶(脳)に定着していくというものです。
突然ですが、あなたはなぜ自分の名前を忘れないか分かりますか?
答えは簡単。今までに何百万回と見て、書いて、聞いて、口に出しているから。
あなたが名前を忘れないのと同じように、日本語語彙や漢字も日に何度も触れることで、記憶に残っていくのです。
語彙力・漢字力ともに、どれだけ日常的に語彙・漢字に触れて意識して覚えているかが重要です
日本語の本を読むことで、常に日本語語彙・漢字に触れられる環境を作りましょう。
帰国後、語彙力・漢字力が不足しているとどうなるのか
海外在住の子どもが日本に帰国した後、一番最初にぶち当たる最初の壁は、日本の授業が理解できないということです。
これは日本の授業レベルが高いということではなく、教師の言っていることが分からなかったり(語彙力不足)、テキストの説明が読めないのです(漢字力不足)。
例えば中1の方程式で…
ここで注目すべきことは、出されている問題は解けるということ。問題は解けるのに、教師の説明が理解できないという部分です。
問題は解けるのに、教師の説明が理解できないことは、将来的に以下の展開になる可能性があります。
- 問題は解けているのに教師の説明が理解できない
- 教師の説明や質問の意図がつかみ取れず、答えは分かっているのに発言する機会が減る
- 成功体験ができず、自己肯定感が下がる
- 学校が苦痛となり、不登校となる可能性がある
大げさと思われるかもしれませんが、自己肯定感が下がり不登校に陥るケースはよく見られます。
教育心理学研究室の大学院の相談室にいた頃、この症例はいくつも見てきました…
また、帰国子女に関する研究でも、不登校が多いという結果が出ています。
帰国子女が呈する不適応問題は,登校拒否,家庭内暴力,抑うつ,無気力,自殺未遂,食欲不振であり,中でも登校拒否が一番多かった。
海外帰国子女の適応困難に関する精神衛生学的研究 筑波大学 田村毅
帰国子女の不登校を受け入れる学校も出てくるほど、深刻な問題となってきています。
日本語読書で、語彙力・漢字力以外に得られるもの
ここまでで、日本語語彙力・漢字力の重要性が分かったと思います。
ネガティブな情報ばかりで不安になったかもしれませんが、これから日本語で読書をすればまったく問題ないので安心してください。
しかも、日本語での読書は漢字力・語彙力以外にも多くのメリットがあるんです。
ことわざや四文字熟語の獲得
読書によってことわざや四文字熟語を身につけることができます。
ちなみに英語にもことわざはあります。ただ注意点があります。
注意点を述べる前に、以下に英語のことわざを挙げてみるので、どのことわざを言っているのか考えてみてください。
- Seeing is believing.
- When in Rome do as the Romans do.
- Who knows most, speaks least.
分かりましたか?
- 見るものが信じるもの➡百聞は一見にしかず
- ローマにいるときはローマ人がするように➡郷に入っては郷に従え
- 一番知っている人は一番話さない➡沈黙は金
まったく違う表現です。これが注意点!
英語のことわざも日本語のことわざも、言いたいことは同じです。ですが、日本語のことわざとは表現が違います。
ことわざに関してはパズルで当てはめていく語彙のように、英語で獲得したことわざを日本語に当てはめることはできません。
よって、ことわざは初めから日本語で覚える必要があります。
もちろんですが四文字熟語は英語にはないものなので、初めから日本語で覚える必要があります。
四文字熟語はマンガもおすすめです。
ポケモンは技名が四文字熟語だったりするので(電光石火など)、読書嫌いな子はマンガのポケモンからスタートしてもOK!
日本の文化や学校生活への理解
日本の学校生活には、アメリカの学校生活にはない習慣があります。
- 掃除の時間
- 集団登下校
- 運動会
- 制服
- 受験
パッと思いつくだけでもこれだけの違いがあります。
子どもにとって、学校生活の違いは混乱の引き金になります。
日本の学校生活を知らない子にとっては、「何でこんなんなの?」「こんなのおかしい」と、いわゆるカルチャーショック状態となりストレスになります。
帰国後のストレスを軽減させるためにも、日本の文化や学校生活を日本語の本であらかじめ知っておくことが重要です。
取り除けるストレスは取り除いておきましょう。
角川つばさ文庫
日本独特の文化(ひな祭り、GW、十五夜など)も本から学べます。
友人関係のきっかけ
日本国内の転校でも、転校先で友人をつくることは簡単ではありません。
ましてや国をまたいでの転校となると、受け入れる子ども側も慣れていないので慎重となり、お互いによそよそしくなってしまいます。
そんなとき、休み時間に本を読んでみたらどうでしょう。1人や2人ポツポツと「その本知ってる」と話しかけてくれる子が出てきます。
共通の話題ができて、友人関係のきっかけになります
本は学校に持ち込むことができます。本をきっかけとして、その後は持ち込み不可のゲームやマンガなど、他の共通の話題を探すのも良いと思います。
まとめ
日本語の本で読書をすることは、以下の5つのメリットがあり、帰国後の日常生活がスムーズに送れます。
- 6つの力を日本語で身につける
- 日本語語彙力・漢字力の獲得
- ことわざや四文字熟語の獲得
- 日本の文化や学校生活への理解
- 友人関係のきっかけ
子どもが送る学校生活は小さな社会。あなたが思っているよりも複雑です。それは教育学系心理学を国立大学院で研究していた私だから分かります。
日本語での読書で、少しでも日本語語彙力や漢字力を身につけ、日本文化を理解しておく方が、帰国後の子どものストレスは格段に少なくなります。
アメリカに来たとき、英語がまったくできなかったけど学校楽しく通ってたし。日本語分かるんだから日本に帰っても平気でしょ
そんな風に思っているあなた、ちょっと待ってください。
アメリカは英語ができない子はたくさんいます。移民が多いからです。そしてその子たちへのサービス(学校でのESLクラスなど)もたくさんありますし、クラスメートもしゃべれない子に慣れています。
でも日本はどうでしょうか?
帰国子女に対する特別な授業はないし、クラスメートは帰国子女の対応に慣れていません。そもそもアメリカほど移民がいません。
アメリカと日本の教育現場には大きな違いがあります。
どちらが良い悪いではなく、大きな違いがあるのは事実です
帰国子女がぶち当たる壁を、日本語での読書ですべて解決できるわけではありません。ですが、ある程度の壁は乗り越えられます。
今からでも遅いことはありません。
日本語の読書で日本語語彙力や漢字力を身につけ、帰国後の子どものストレスを軽減する働きかけをしてみませんか?
海外子女の読書方法を紹介しています
コメント