あなたは子どもの読書の重要性を説明できますか?
子どもの読書が重要だということは分かっているけれど、その理由は分からない…。そんな方が多いんじゃないでしょうか。
読書は子どもの知識面・情緒面・人間関係、すべての土台になるものです。
子どもが読書をすることによって、以下の6つの力が身につきます。
- 読解力
- 記憶力
- 思考力
- 文章力
- プレゼン力
- 他人を理解する力
社会に出ても必要な力です
また、読書をすることによって学力が上がるという研究も数多くあります。
本サイトはふだん、海外在住の子どもの日本語学習について発信しています。
今回は海外在住者に限らず、なぜ子どもにとって読書が重要なのか、教育系国立大学院卒・元大手進学塾講師のワタクシふみが解説。
この記事を読めば、ふんわりとしか理解していなかった読書の重要性が分かります。
今まで一方通行だった子どもへの「読書したら?」が、質の高い声かけに変化するはずです。
知識ありきで「読書したら?」と言えるので、子どもの受け答えも変わってきますよ
読書で身につく6つの力
- 読解力
- 記憶力
- 思考力
- 文章力
- プレゼン力
- 他人を理解する力
読解力
一番分かりやすい力は読解力。
文部科学省は読解力を以下のように定義しています。
自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力。
文部科学省 PISA調査における読解力の定義,特徴等
簡単に言うと、書いてある文章を読んで理解し、それを利用して考えを深めることができる力のこと。
例えばハリーポッターのハリーとロンとハーマイオニー3人で敵を倒す文章を読み、仲間と力を合わせて問題解決すればいいと考えるようになる、といった感じ
読解力は国語だけでなくすべての教科、ひいては社会生活を送る上で重要な力です。
記憶力
当たり前ですが本は文字しかありません。たまに挿絵がついていますが、基本は文字情報のみです。
人は文字情報を読みながら、頭の中で映像をイメージしています。イメージしながらそのイメージを同時に体験しているのです。
例えば「長いスカートを着た女性」という文章を読み、その女性をイメージしながら、同時に長いスカートを着た女性の存在を体験しているのです
人は体験することで、より強く記憶に残ります。読書を通して体験することによって、記憶に残りやすくなります。
勉強に関する記憶力も大切ですが、人の名前を覚えたり、言っていたことを覚えていたり、将来的に他人から信頼を得るためにも、記憶力は必要な力です。
思考力
2020年度から小学校では新しい学習指導要領がスタートします(中学校は2021年度から)。
新しい学習指導要領の大きな柱として立てられているのは「生きる力」。
課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養う
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
今後の学校教育は、思考力をはぐくむ教育に力を入れていくことが明記されています。
例えば「すてきなドレスを着た女性」という文を読んだ場合。人はまず映像をイメージし考え始めます。
このようにどんどんと考えが広がっていきます(思考の拡散)。
この思考の拡散が思考力なんです!
ちなみにyoutubeなどの動画ではこの思考の拡散は起こりません。
なぜなら、素敵なドレスを着た女性の映像が画面に映って終わりだからです。どんな色だろう?半袖?長袖?などと考えている余地はありません。
自由な思考の拡散で高まった思考力は、1つの物ごとに対してたくさんの考えを展開できるようになり、様々な視点から物ごとをとらえられるようになります。
これは何か問題に直面したとき、多面的な考えができるようになるということ。凝り固まった狭い視野ではなく問題を広く多面的に見ることができるので、問題解決がしやすくなります。
文章力
文章をたくさん読むことによって、読みやすい文章・読みにくい文章が分かってきます。
読みにくい文章
- 語尾がすべて同じ(〜です。〜です。〜です。などと同じ語尾が続く)
- 一文が長い
- 読点(、)の位置が違うため、意味が変わってしまう
私は歩きながら、遊んでいる子を見た
私は、歩きながら遊んでいる子を見た
まったく同じ文ですが、読点の位置が違うだけで意味が変わってしまいます
読みやすい文章の方が相手に伝わりやすいと読書で経験しているため、自分も読みやすい文章を書こうと意識します。
これによって作文の精度が上がったり、将来的に仕事で相手にメールを送る場合などに役に立ちます。
プレゼン力
プレゼン力とは、プレゼンテーション能力のこと。
プレゼンテーションには表現力や説得力も重要ですが、一番重要なのは「自分の言いたいことをまとめる力」です。
何が言いたいのか分からなければ、どれだけ素晴らしい表現力や説得力があっても、聞き手の心は動きません
本を読み終わったあと要約するくせをつけることがポイント。
結局この本は何が言いたかったのか?と自分なりに本を要約し、本の要点をまとめられるようになると、日常生活でも自分の考えをまとめる力がついてきます。
他人を理解する力
読書によって、この本は一体何が言いたいのか?という要点を掴むことができるようになります。
これは人間関係にも役に立つ力。他人が話している内容の要点を即座に理解できるようになるからです。
例えばあなたのお子さんが、友だちと言い合いをしたとします。
友だちの言葉の要点が即座に掴み取れれば、
- それは誤解だと誤解を解いたり
- それは違うと自分の意見を言ったり
- 自分が悪ければ素直に謝ったり
正しく反応することができます。
他人の話の要点が掴めなければ、相手に共感したり相手を理解したりすることはできません。
社会生活を送る上で円滑な人間関係を送るためには、相手に共感したり相手を理解したりすることは必須です。
読書で身につく6つの力:まとめ
この6つの力は学生時代でも重要ですが、社会に出てからの方が圧倒的に重要です。
人間の人生は、学生時代よりも社会に出てからの方が長いです。読書で6つの力を身につけることができれば、その長い期間に訪れるであろう困難に立ち向かうことができます。
社会の中で強く自立して生きていくための根底となるものを、読書で得ることができるのです。
読書で学力が向上する
研究データあり
読書をすることによって学力が向上するというデータは、数多く発表されています。
読書活動に関しては、読書好きであるかどうかが教科の学力の様々な部分と強い関連を示し、その関係の強固さが明らかになった。
引用元:静岡大学,文部科学省「読書活動と学力・学習状況の関係に関する調査研究」
読書量が多い子どもほど、学力(4 教科の偏差値平均)を伸ばしている。「読書 多い」は平均で+1.9 であるのに対して、「読書 無し」は-0.7 と偏差値を下げている。
読書をする子どもほど、学力が高いということが証明されています。
読書量が多いから学力が高い?学力が高いから読書量が多い?
読書で頭が良くなるんじゃなくて、もともと頭がいいから読書するんじゃない?
実は私も以前はそう思っていました。
学力が高い ➡ 学力があるため本がスラスラ読める(本を読むことに抵抗感がない) ➡ 読書量が多い
表面上は読書量が多い子の学力が向上するという結果だが、もともと学力の高い子の読書量は多いので、データ上では学力が向上しているように見えているだけ、ということです。
どちらが原因でどちらが結果か分からない状態ですね…
ですが、ベネッセが2018年に発表した研究結果で驚きの事実が分かりました。
学力テストの結果を基に、子どもたちを3グループに分け、各学力層によって読書の効果が異なるのかを確認したところ、学力が低い子どものほうが読書の効果が大きかった。
つまり、もともと学力が高い➡読書量が多い➡読書量が多い子の学力が向上しているように見える、のではなく、
学力が高い低いに関係なく読書量が多い ➡ 学力が高くなる
ということが分かったのです。
その結果、あいまいだった原因と結果がはっきりしました。
- 原因 : 読書量
- 結果 : 学力が向上
ますます子どもの読書の重要さが分かる結果となりました。
なぜ、読書量が多いと学力が向上するのか
考えられる理由は3つ。
- 純粋に知識量が増える
- 問題が解ける成功体験が増えて、自主的に勉強に取り組むようになる
- 本を読むことへの抵抗感がなくなり、勉強で分からないことがあれば自分で調べるようになる
知識量が増えれば問題をスラスラ解けるようになり、授業中に発表したり、先生に褒められたり、成功体験が増えます。
それによって勉強が楽しくなり、今までいやいややっていた勉強を自主的に取り組むようになります。
また、分からないことを自分で調べるようになるので、本が身近にある環境となっていきます。結果ますます読書量が増えていき、学力がより向上していきます。
読書で学力が向上する:まとめ
読書によって学力が向上する様々なデータを紹介しました。
それじゃあこれからは問題集はやらず、読書だけすれば良いんだね♫
残念ですが、それは今の日本の教育ではNG。
なぜなら日本の教育で測る学力は、「問題への慣れ」で解決できる場合が多いからです。
何度も同じような問題を繰り返し解き問題に慣れることで、学力が劇的に向上する場合も多々あります。よって問題集を使って慣れることは必須。
読書は底力をつけるという長期的な位置づけです
ただ読書が学力向上に一役かっているのも事実。しかも読書は、コストパフォーマンス的観点から見ると最強です。
将来的に塾などに通う費用を抑えられる可能性があります。
私が勤めていた進学塾は、中3の1年間だけで40万円の授業料でした。もちろん夏期講習(10万円)・冬季講習(10万円)・春期講習(7万円)は別途請求です…
海外在住者向けの記事ではありますが、日本在住の幼児の保護者の方も参考になります
海外在住者向けの読書に関する記事はこちら
まとめ
子どもは読書をすることによって、6つの力を身につけることができます。また学力が向上するというデータも数多く出ています。
学力向上のデータをいくつか紹介しましたが、私は学力向上は6つの力を身につける過程で得られる、ラッキーな副産物として考えています。
重要なのは、6つの力を身につけることです
あなたはどうして子どもの学力が上がることを望んでいるのですか?良い大学に入って欲しいから?良い企業に就職して欲しいから?
将来、自立して強く生きて欲しいと願っているからですよね。
人生100年と言いますが、そのうち学力を必要とする学生時代は、大学まで進んだ場合でもたったの16年です。残りの84年は社会で自立して強く生きていかなくてはいけません。
読書で学力が上がるのは嬉しいことです。ですがこれは目標ではありません。ラッキーな副産物です。
読書によって将来自立して強く生きていく6つの力を身につける。これを目標として、子どもの読書環境を整えていきましょう。
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